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東京地方裁判所 平成7年(特わ)14号 判決

本店所在地

東京都新宿区新宿一丁目二五番一一-一〇二号

日興電機産業株式会社

(右代表者代表取締役 小原田定宏)

本籍

熊本県阿蘇郡小国町大字上田三五四九番地

住居

東京都新宿区新宿一丁目一九番一〇号

サンモールクレスト三〇三

会社役員

小原田定宏

昭和一〇年一一月二七日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官沖原史康、弁護人佐々木和郎各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人日興電機産業株式会社を罰金四〇〇〇万円に、被告人小原田定宏を懲役一年に処する。

被告人小原田定宏に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人日興電機産業株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都新宿区新宿一丁目二五番一一-一〇二号に本店を置き、遊技場の経営等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人小原田定宏(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、平成二年三月一日から平成三年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四億一七七八万六七五四円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年四月二六日、同区三栄町二四番地所在の所轄四谷税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が一三六万〇八六九円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第三二五号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億六六二三万四四〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人の検察官に対する各供述調書

一  竜崎嘉明、細山信夫(二通)、石原秀基、赤林盛輝、中田公二、中川徹洋(但し、本文一一丁綴りのもの)、佐藤誠久、谷口知子、沢田こと尹貞雄、高橋創、小林悦子、吉田淳及び島田富久子の検察官に対する各供述調

一  検察官作成の捜査報告書

一  検察事務官作成の売上高調査書、期首商品棚卸高調査書、仕入高調査書、給料手当調査書、福利厚生費調査書、旅費交通費調査書、接待交際費調査書、通信費調査書、租税公課調査書、消耗品費調査書、賃借料調査書、減価償却費調査書、税理士報酬調査書、水道光熱費調査書、募集広告費調査書、車両関係費調査書、事務所経費調査書、支払手数料調査書、店舗給料調査書、名義料調査書、飲料費調査書、店舗経費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、損金の額に算入した附帯税等調査書、損金の額に算入した地方税利子割調査書、交際費等の損金不算入額調査書、事業税認定損調査書及び申告欠損金調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  大蔵事務官作成の報告書

一  登記官作成の登記簿謄本

一  登記官作成の閉鎖登記簿(役員欄)謄本

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第三二五号の1)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項(罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)

2  被告人

判示所為につき、法人税法一五九条一項(罰金刑の寡額につき、前同)

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告会社の代表取締役であった被告人が、確定申告書の事業種目を偽り遊技場経営からの売上を除外するなどして欠損申告し、一億六六〇〇万円余の法人税を脱税したというものであり、一事業年度としてはほ脱額が高額で、ほ脱率も百パーセントと悪質である上、脱税の動機をみても、被告会社の経営する遊技場が賭博ゲーム店であったことから、警察の摘発による休業に備え資金を確保する必要があったなどというもので、格別斟酌すべき点はなく、加えて、被告人においては昭和六三年五月一一日に常習賭博で懲役二年(四年間執行猶予)に処せられながら、右猶予期間中に本件犯行に及んだことなども併せ考慮すると、被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後税務当局の認定に従い本件事業年度に関する本税、重加算税等を完納していること、被告人は当公判廷において本件を認める供述をするなど反省の情も窺えることなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金五〇〇〇万円、被告人・懲役一年)

(裁判官 平木正洋)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

ほ脱税額計算書

〈省略〉

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